
店のシンボル、ヴァージニア・ウルフ。店はウルフの著書『自分ひとりの部屋』に触発された人々により誕生した
独立系フェミニスト書店の記念碑的存在
女書店は、1994年にオープンにした中国語圏で初めてのフェミニスト書店です。フェミニズムや女性、ジェンダーに関する書籍を販売し、出版事業も行う独立系書店として知られています。国内外のフェミニズムやジェンダーに関する書籍を扱う店にインスピレーションを与え続けている存在といってもいいと思います。
場所は国立台湾大学にほど近い商店街にある小さな建物の2階です。台湾大学の近所ということもあり、周辺は書店・古書街として知られているそうです。(1階は「女坐店」〈Witch house =魔女の家〉というライブハウス。台湾インディース音楽の聖地でありジェンダーに関する発信を続けているカフェ)
私たちが訪れたのは金曜日の雨の夜。細い階段を上がりドアをあけると、ミントグリーンの壁に白い書棚が目に飛び込んできました。目の前には平置きされた本がずらり。店内は読書に適した昼光色ぎみの明るい光で隅々まで照らされています。
客は私たちのほかに大学生や20〜30代の人たちが5〜6人ほど。女性ひとりの人もいれば、女性と男性のカップルにも複数遭遇しました。奥のテーブルでは男性と女性がパソコンで作業をしている姿があり、ひっきりなしというわけではありませんでしたが、誰かが帰れば、誰かが入ってくるという感じ。ひとり客は椅子やソファに腰掛けながら本を読み、カップルは静かにおしゃべりしながら、たのしげに本を選んでいました。



窓には開店32周年を祝うデコレーション
日本の詩人・平田俊子さんの中国語版を発見!
店ではフェミニズムやジェンダー、LGBTQ+などに関連する社会学、人文学、自然科学、芸術とあらゆるジャンルが扱われており、女書店出版部門の本ももちろんずらりと並んでいました。
日本の本もちらほらありましたが、少ない印象を受けました(見落としているかもしれませんが)。そんなことを思いながら、店内をウロウロしていると、見慣れた名前が目に飛び込んできました。
平田俊子さん!!
敬愛する詩人・平田俊子さんの「詩七日」の中国語版です。平田さんの本に女書店で会えるなんて…! こんなことってあるでしょうか。台湾を訪れる直前にも平田さんの作品を読む機会があり、やっぱりすてきだな〜と感じ入ったばかりで、著書を旅のお供にしようかと考えていたところだったのです。
平田さんは詩作だけでなくエッセイもすてきで、『スバらしきバス』は乗り物エッセイの名著ですし(杉並のことも出てきます)、「読売新聞」の「こどもの詩」の選者をなさっているのですが、選者としてのコメントがまたあたたかくて、ほのぼのして、やさしいするどさがあって、すばらしいんです。
…とにかく、平田さんの本に女書店で出会えてしまったこの喜び。女書店は彼女のおもしろさと魅力を知っている!もうそれだけでうれしくてテンション急上昇。店に対する心の距離は一気に縮まり、平田作品を仕入れた方と語り合いたくなりました。あぁ、本屋さんってやっぱりいいですね。

平田俊子さんの詩集『詩七日』中国語版。装幀がすてきです!
2度閉店して2度復活。市民の後押しで存続
さて、今年でオープンから32周年を迎えた女書店ですが、これまで経営難により、2003年と2017年に2度の閉店を経験しています。しかし、そのたびに購入運動やクラウドファンディングなどの市民の支援で復活。幾多の困難を乗り越え、営業を続けてきました。現在も経営的には厳しい状態が続いており、将来的にはNPO法人化等も見据えているということですが、一見の旅人の気楽な想像を許していただけるなら、そうした背景と現実がすべて、店の魅力と説得力に昇華されているような気がしました。店内は流行最先端のセレクト書店のようなおしゃれなしつらえはないけれど、32年間の実績と信頼がずっしりと、でも風通し良く漂っている感じがして、ついふらりと寄りたくなるような包容力がありました。
店では開店当初からさまざまなイベントが行われており、私たちが訪れたちょうど翌日には、「男性の心理学者による家父長制に隠れた男性のアイデンティについて」というトークが予定されていました。
フェミニズムを入口に、誰もが生きやすい社会を作る場所。女書店はそういう場所なのかもしれません。
◆店の来歴「紫色桃花録」◆
女書店のホームページ内「紫色桃花録」というコンテンツでお店の成り立ちと理念と行動指針が紹介されています。すばらしいので紹介します。(翻訳はAIの力を借りました)
『女書店は女性運動の活動家たちや、ジェンダー平等問題に関心を持つ女性・男性たちがともに手を携えて誕生させました。女性の書くものに触れ、女性の声に耳を傾け、女性の経験を交流できる、居心地の良い空間を提供したいという思いが込められています。この理念のもと、女書店は中華圏で最も充実した女性・ジェンダー問題関連の書籍や映像・音声作品を専門的に収集しているほか、先住民族のハンドメイドアクセサリーの展示・販売も行っています。
かつては、フェミニズムを理解し女性運動を知ろうとすれば、女性団体に入るくらいしか方法がないように思われていました。しかし、女性団体は数多く存在するうえにそれぞれ専門分野が異なり、背景が分からないまま接触することに対して、多くの人が不安やためらいを抱いていました。「不幸な女性だけが助けを求めに行く場所だ」「男性を憎む女性ばかりの集まりだ」「もっと詳しく知りたいけれど、時間がない……」といった声です。
女書店が設立されたことは、厳粛な文化・歴史的意義はもちろんですが、その真の価値と愛される理由は、一般の人々にとって親しみやすく、フェミニズムの多様な姿を知ることができる窓口を提供している点にあります。
ここは単なる書店ではなく、意見交換や交流の中心地なのです。ここでは、女性運動のテーマについて熱く議論に参加することもできれば、女性としての自己覚醒に伴う葛藤や喜びを温かく分かち合うこともできます。さらに、一般的な静かな読書スタイルとは対照的に、女書店は動的な読書の機会も提供しており、さまざまな講座、芸術・文化展覧会、季節のイベントなどを開催しています。本を読むだけでなく、「人」を読み、「絵」を読み、「生命」を読み解くことができる場所です。成功、挫折、苦しみ、歓喜といった女性たちの生活経験の共有を通じて、多様なジェンダー関係の新たな未来を考えるきっかけを提供しています』
(女書店ホームページ「紫色桃花録」より抜粋。ぜひ女書店のホームページを訪れて、ご自身の訳で読んでみてください!

2007年、国家文化総会により「台湾女性文化ランドマーク」に認定。認定証が入口に掲示されていました
